第70章

稲垣栄作は震える指で化粧台に触れた——

高橋遥が日記帳を持ち去ったのだ!

ふと、ベランダから薄い焦げ臭いにおいが漂ってきた。何かが燃えている匂いだ……稲垣栄作は体を震わせ、何かを悟ったように足早にベランダへ向かった。

そして彼は見た。高橋遥が二人の結婚写真を燃やしているところを。

そして彼は見た。あの日記帳も、高橋遥によって燃やされているのを。

高橋遥はそこに座り、まるで何の価値もないものを燃やしているかのように、静かに見つめていた。

「気が狂ったのか!」

稲垣栄作は考える間もなく、前に出てその日記帳を救おうとした。彼は何の防護策も講じずに素手で掴み取ろうとした……なぜ自分がこ...

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